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お知らせ 2013.1.31  弁護士 鈴木 周

 
   

ビアンキ自転車転倒事故 判決言い渡し日のお知らせ

 
  1. 本年2月20日(水)午後1時10分(変更となりました:こちらを参照)より、東京地裁806号法廷において、私の依頼者である中島寛さんほか1名と、被告サイクルヨーロッパジャパン株式会社との間の損害賠償請求事件の判決が言い渡されます。
    この事件は、平成20年8月22日、当時60歳であったつくば市在住の中島寛さんが、サイクルヨーロッパジャパンが輸入したビアンキ社製のクロスバイク「バックストリート」に乗車中、突如自転車のサスペンションが分離して前方に転倒し、顔面を地面に強打し、首から下が全麻痺になってしまったという痛ましい事件です。
  2. 事故の原因は、サスペンション内に水が溜まり、それによりスプリングが腐食・破断し、走行中にサスペンションが分離してしまった、という点にあります。
    このビアンキ社製の自転車のサスペンションは、台湾の大手メーカーであるRST社製でしたが、@キャップに溝がついており、水や空気が侵入する、つまり雨水や結露によって水が溜まり得る、A下部に水抜き穴を開けるなどの、水分排出機構がついていない、B貫通ボルトが入っておらず、スプリングだけでつながっている、という3点で、特殊な構造を有していました。

  3. 私は、事故直後から、サイクルヨーロッパに対し、「通常有すべき安全性を備えていない」とし、製造物責任法、いわゆるPL法に基づく責任を果たすよう要求し、一旦は同社の代理人も「保険会社としては、責任は認めざるを得ない」と回答していましたが(保険会社が紹介した代理人だったのでしょう)、理由は不明ながら当該代理人が辞任してしまい、新しい代理人に替わったところで態度を転換させ、責任を全否定するに至りました。未だに謝罪措置もなければ、息子さんの帰国費用等の実費すら一円も支払われておりません。

  4. そこで、平成22年4月に本件訴訟を提起せざるを得なくなったものですが、訴訟における争点は、大きく分けて下記の3つでした。
    (1) 因果関係 本件転倒事故はサスペンションの分離によって発生したものか。
    (2) 欠陥の有無 通常の自転車に比較して安全性が備わっていないと評価できるのか。
    (3) 過失相殺 ユーザーによるメンテナンスはどのレベルで要求されるのか。
    この各点において2年以上にわたり激しく議論が戦わされました。
    まだ判決が出ておりませんので、詳細を開示することは致しませんが、サスペンションに残されていた痕跡、かつ同種の転倒事故が少なくとも6件も発生していることから、因果関係は明らかであると考えられます。また、かかる構造のサスペンションはRSTが2002年までに作っていたもの以外は見当たらず、同種事故におけるナイト(経済産業省が欠陥判定のため事故の調査を委託している機関)の判断でも端的に「A1」ランク、つまり「設計不良」である旨の判断が出ておりますので、欠陥を有することも認定されると思います。そして、メンテナンスの点ですが、クロスバイクはスポーツ車のエントリーモデルであり、一般の方も街乗りで使用するものです。そのようなユーザーにどこまでのメンテナンスが要求されているのか、それによって過失の有無、割合が異なってきます。取扱説明書で分解修理は禁じられていますので、結局メンテナンスはショップでのものに限定されますが、定期点検に出した場合でもサスペンションの中までは通常は見てくれません。また、ユーザーとしてもまさか突如分離するとは思っていない以上、ことサスペンションに関しては「不具合が出たら見て貰おう」というのが一般的な対応なのではないかと思われます。こちらは裁判所の判断を待たなければなりません。

  5. 被告の推計によると、RST社製の同種のサスペンションは、国内に10万本程度流通しているとのことです。ビアンキだけではなく、国内大手自転車メーカーにも多く供給されております。一応、本件訴訟提起時のニュース報道などにより、各社がホームページなどを通じて点検整備の呼びかけをしているようですが、一般のユーザーは自分の自転車に関する情報を常にネットでチェックしていないでしょうから、未だに何の認識もされていない方も多いと思います。
    時間の経過に伴い、さらに同種事案が発生することが予想されますので、欠陥が認定された場合には、各メーカーには、ユーザーの特定と無償の交換修理が要求されることになるのではないかと考えております。
    中島さんも、自身の権利救済だけではなく、ご自身のような被害者が今後出ないよう、この判決をきちんと社会に公表し、注意を呼びかけたいと考えています。

  6. この裁判の経過や中島さんの現在の状況、自転車の構造や欠陥の有無について、訴訟提起時と同じく、TBSが熱心に取材してくれ、判決日前日である2月19日(火)の夕方6時のNスタで取り扱ってくれる予定になっています(当日の出来事によっては変更の可能性あり)。翌20日には判決の内容を同様にNスタで流してくれることになっています。私は出演しないのですが、自転車に興味のある方はご覧になってください。
    判決が出ましたら、本サイトにて、PDFで開示したいと思っております。

 

〜ビアンキ自転車転倒事故 判決期日延期のお知らせ〜

本日、2月6日、東京地方裁判所から連絡が入り、「本件は複雑な事件なので、2月20日までに判決書が出来ません。言い渡し期日を3月25日(月)午後1時10分に延期します。」とのことでした。延期はままあることですし、またきちんと細部まで検討して貰っているということですから、因果関係で棄却するような門前払いも(たぶん)なくなり、好ましいとも言えます。判決当日の記者会見の準備なども進めておりましたので、少々拍子抜けですが、仕方ありませんので一旦仕切り直しです。良い判決が出るのを祈るばかりです。

 

 
   
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